「判決が軽すぎます。まだ妻の墓前にも報告できていません……」
うなだれながらしぼり出すように話す男性は、神奈川県川崎市在住の米澤滋氏(83、仮名)。去る8月27日、妻の命を奪った被告に言い渡されたのは「禁固2年、執行猶予4年」という判決だった。
◆左手にスマホ、右手に飲み物
昨年12月、50年以上連れ添った妻(当時77)が、市内の商店街でスマホを見ながら電動アシスト自転車を運転していた女子大生(20)にはねられ、脳挫傷で死亡した。
「警察の取り調べに対し、『ぶつかるまで被害者には気付かなかった』と証言しています。事故当時、女子大生は左手にスマホ、右手に飲み物を持ち、
ハンドルには腕を添えているだけの状態で、とてもブレーキをかけられる状況ではなかった。左耳にはイヤホンまでしていました」(全国紙記者)
その後、女子大生は重過失致死罪で在宅起訴され、書類送検された。米澤氏が語る。
「法律上、自転車は『軽車両』と定められています。しかも乗っていたのは最大時速30km近く出る電動アシスト自転車。
なぜ危険運転致死傷罪が該当しないのでしょうか。やるせない気持ちが募ります」
事故当日、現場に居合わせた地元住人によれば、「女子大生はぶつかった後、被害者の救護活動もせず、近くに自転車を停めて立ちつくしているだけだった」という。
法廷でも女子大生側の弁護士が「悪質性の低い脇見運転にすぎない」と主張するなど、米澤氏の心の傷は深まるばかりだった。
「人の命をなんだと思っているのでしょうか……。加害者への怒りはもちろんありますが、今ではそれ以上に、ながらスマホを放置し続ける国や、
対策に本腰を入れない携帯電話と自転車メーカーへの憤りも抑えられません」(同前)
現在、自転車を運転しながらの携帯電話使用は、道路交通法第71条で禁止されており、5万円以下の罰金が科せられる。しかし、危険性を鑑みると「罰則が軽すぎる」という指摘は多い。
「街に出ると、若い子はスマホばかり見ている。私のような高齢者は、歩くのも遅いし、とっさの判断力も鈍い。
ながらスマホの人間が前から来たら、こっちが気付いても避け切れない。どこを歩くのも怖くて仕方がない。
にもかかわらず、最近は自転車のハンドルにスマホを付けられる部品が平然と売られている。恐怖をさらに広げているようにしか思えません。
例えば、一定以上の速度ではスマホ操作をできなくするような機能を付けてほしいと切に願います」
運転中の携帯端末利用の罰則を強化する道路交通法改定の気運はあるが、国会での審議は先送りにされているのが現実だ。
「国会議員にとって、妻の犠牲は取るに足らない出来事なのでしょうか。あと何人犠牲になれば、動いてくれるのか。
妻は生前、よく口癖のように言っていました。『私が絶対あなたの最期を看取る。それから死ぬの』って。そんな妻に先立たれてしまった。せめて妻の死を無駄にしたくない。その一念で生きています。
どうか、ながらスマホの危険を知って、同じことを二度と繰り返さないよう法整備や携帯の仕組みを見直してほしいのです」
米澤氏の悲痛な訴えに、現代のスマホ社会に生きる日本人全体で向き合う必要がある。
https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0902/sgk_180902_9016350382.html 転載元